【特別企画】Z世代の起業家がZ世代の学生に向けて「起業の実態」を語る講座「実践ベンチャー論 創業経営者対談」2024年版/岡目八目リポート

サービス提供:執筆:杉浦佳浩 (すぎうら・よしひろ) 代表世話人株式会社代表

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回ご紹介するのは、特別企画、埼玉大学で行われた講座「実践ベンチャー論 創業経営者対談」(2024/7/5開催)です。

埼玉大学で行われたこの特別講座は、20代の起業家・起業経験者の方たちが学生に向けて起業の実態を語るというものです。真面目に一生懸命ビジネスに取り組み続けている20代の3人の登壇者と、食いつくように聞き入る学生たち。

とにかくものすごく濃い内容、圧倒的な突き抜け感! レベルが一段も二段も違う感じです。ご登壇のお一人はなんとアブダビからオンラインでつなぐという。おもしろいを通り越して、おそらく、「こういう話、経験は初めて」の学生も多かったと思います。個性豊かすぎる3人の登壇者、カルチャーショックと熱気と未来への選択肢が満載の時間でした。大学の講座では珍しく(?)学生からの質問が相次ぎ、質疑応答の時間が足りない事態に。後日、学生からのインターンシップ希望の連絡もいろいろあったようです。

テキストだけではこの濃すぎる内容をお伝えしきれないので、3人の方が語ってくださった印象的な一部を本記事でご紹介します。経営層の方は、この記事をご自身で読むのも、社員の方に読んでもらうのもいいかと思います。さっそく今日から何かしたくなるでしょう!

「自分から行動すると、何かが起きる。人生は自分で面白くできるのだ」

3人のお話を聞いていたら、そういう気持ちになりました。

●ご登壇

安田 光希(やすだ こうき)氏:連続起業家。現在の拠点の中心はアブダビ

田山 凌汰(たやま りょうた)氏:株式会社One StepS 代表取締役CEO

石原 里奈(いしはら りな)氏:株式会社FinT広報マネージャー

●モデレート

杉浦 佳浩氏:代表世話人株式会社 代表取締役

1 起業のきっかけはさまざま。「流れで起業」や「学生のうちに起業」も。

3人の登壇者はまず、どのような事業を行っているか、なぜ起業の道を選択したかを話してくれました。そこからして話が個性的、「こういう人生の拓き方もあるのか」と思います。

それぞれのプロフィールがまた面白いので、下記ご参照ください。

登壇者プロフィール

3人の起業のきっかけなどを聞いていると、とにかく「動いてみる」「やってみる」「そしてやりきる」ことが大事だと感じます。それぞれに印象的なお話もありました。話してくださった順番にご紹介していきます。

 

●安田さんの起業きっかけの話

「(お客さまからの)需要があったので起業した」

こういきなり自然体でぶっこむ感じ、伝わるでしょうか(しかもこの安田さんはアブダビからオンライン)。いきなりレベルが違う感じ。誤解を恐れずに言うと、「これがやりたい!という強い思いがあって」とかではないのです。大学時代、AIを勉強するサークルの友人たちと、後輩のためにと英語版のAI教材を日本語版にわかりやすくつくりなおしたところ、誰もが知る大手通信会社が安田さんたちに注目。「会社を作ってくれたら仕事を発注したい」と要望されたので起業したそうです。

このように安田さんは、学生時代からかなり高度なことをやっておられたのですが、とにかく力みがなく自然体で、「求められたから起業した」という話。その後、いくつか会社を立ち上げたりして、特にすごいのは、ある会社が4年で上場、時価総額500億円までになったというから驚きです。たった4年で。

「おもしろいからやってみよう」「おもしろいことをやってみよう」が原動力になっている安田さん。この「おもしろいことって何なの?」という話もとても納得感ありましたので、後ほどご紹介します。

アブダビからオンライン参加の安田さん

安田さん

 

●田山さんの起業きっかけの話

「チャレンジしている人への憧れ、起業している人への憧れがあった」

少し話しただけで頭の回転の速さが伝わってくる現役のミスター慶応・田山さん。田山さんが口を開くと物事が整理され、そして場が和やかにもなるというすごさ。今回の講座では、登壇者が突き抜けた方々なので、話の内容がすごすぎて学生がポカンとする場面もありました(すごいということ自体は学生にも伝わっている)。そんなときに登壇者と学生との間をとりもって瞬時に通訳してくれていたのが、この田山さんです。田山さんのおかげで、聞いている学生の理解度がかなり上がったのではないかと思います。こうした通訳、なかなか普通にできることではないでしょう。

起業している先輩がいたこともあって、高専時代からもともと起業、スタートアップに興味があった田山さん。慶應大学に入学する前にシードベンチャーキャピタルにインターンとして参画、数多くの起業家と会い、話をしてきています。

現在はAIを活用したシステム開発などを行う会社を創業し、金融機関などAIで効率化できる余地が多い業界に寄与したいと、お客さまに寄り添って泥臭くビジネスに取り組んでおられます。好奇心旺盛、スタートアップやAIなどについて調べたり勉強したりするのが好きだという田山さん。興味があるから続けられるというお話はとてもよく分かります。

AIスタートアップの田山さん

田山さん

 

●石原さんの起業きっかけの話

「学歴コンプレックスが起業につながった」

何事にも自分なりの意見、考えを持ち、しかもそれを自然体で発言する石原さん。石原さんの話には、何かしら石原さんならではの視点があり、「なるほど」と思わせられます。

学生時代に起業を経験、その後サイバーエージェントに入社、今はSNSマーケティングのFinTで広報マネージャーというこれまたすごい経歴ですが、もともとの出発点が「大学受験に失敗して志望校に行けなかったことから始まっている」そうです。

「学歴に変わる強みを4年間で創ればいい」とお母さまに言われたことをきっかけに学歴コンプレックスが消えたという石原さん。その後、大学の起業家育成講座で、大手メーカーの現実の課題解決に取り組んでいくのがとても面白かったそうです。早くから実業に触れていたのがすごい。そして、大学1年生の最後の日に、犬のトリマーと飼い主をつなぐマッチングサービスで起業。石原さんからは、やりがいのあること、やってみたいことにどんどんチャレンジして切り開いていく力強さ、行動力をとても感じます。

広報マネージャーの石原さん

石原さん

 

起業のきっかけからして三者三様の面白さ。

おもしろいと思うことをやってみる、行動してみる。自分から動く。

といったあたりは共通しているように感じます。

「では、何がおもしろことなのか? 学生のうちはおもしろいことが何なのか分からないかもしれないので、こう考えるといいかも」と安田さんが言っていた次のことも印象的でした。

「自分がやってうまくいくと、おもしろくなってくる。なので、最初は面白さを考えずに自分が得意で人から求められることをやってみる、というのもオススメ。圧倒的な能力があると、それを欲してくれる人が出てきて、経験値が増しさらにできるようになり、もっと楽しくなってくる。そうしていくと『ほぼ負けない』『これで貢献できる』と思えるようになる」

「『自分が得意なことで嫌いなこと』ってないはず。自分の好き嫌いはあまり信用していない。(自分が好き嫌いと思っているのは)勘違いかもしれない。それより、得意なことをやるのがいいと思う」

自分が興味があること、好きなことを探してみようとかではなく(それが悪いというわけではない)、「自分ができることをとことんやる=おもしろくなる=ほぼ負けないことになる」。とことんやる、圧倒的な能力、というあたりに言外の凄みを感じます。青い鳥を探してないものねだりを繰り返すのではなくて、自分ができることをとことん、そこから。確かにこういう進め方、突き詰め方もあるなぁと感じました。

一方で、大学1年のときにご自身の好きなことで起業した経験のある石原さんが、

「好きなことがあるのなら、20代半ばまでは好きなことをとことんやってみて、『好きから見つけていく』というのもいいと思う」

と話していたのも、早いうちに起業経験を積んだからこその発言で、納得感ありました。

2 未来に向けてやっていること、課題

3人それぞれ、未来に向けてやっていることや課題もさまざまでした。

 

●安田さんの未来に向けてやっていること

安田さんは、日本では主に大企業向けにAI・デジタル技術を用いた企業改革・改善を行ってきて累計のお客さまは600社以上。現在は拠点の中心はアブダビで、世界で勝てる技術力などを持った日本企業とそれらを購入したい中東企業をつなぐという、他であまり聞かないようなことをやっています。

安田さんが課題に感じていて未来に向けて今やっているのは、「日本のプレゼンス、地位をもっと上げていくこと」だそうです。中東に出ていくと、中国や韓国の会社の勢いがすごく日本の地位が塗り替えられつつあることを痛感するという安田さん。さまざまなコネクションなどでいろいろと仕掛けており、とにかく話が世界的、スケールが大きい。こういう人が日本の未来をつくっていくのだと感じます。日ごろから人種を問わずたくさんの人と会う、そのためにとにかくスピードが速い。やるやらないの判断が速く、徹底して時間を無駄にしない安田さんです。

 

●田山さんの未来に向けてやっていること

田山さんはAIの会社を創業して1年くらいです。メンバーはエンジニアが中心ということで、そのこと自体がまず大きな強みだと思います。今後、未来に向けてはマーケティングや営業分野の採用にも力を入れていきたいそうです。AIタレント、AIアバターの開発などPR効果のあるAIも手掛けていたり、さまざまな分野・業界の人とつながることに投資していきたいということで、プロモーション活動、クライアント開拓も積極的に進めている田山さん。

今回、会場には高専出身の学生の方もいて、特に田山さんの話に聞き入っていました。経歴に共通点、似たところがあると共感し、自分の未来の姿、進む道が想像しやすいのだと思います。それに加えて田山さんの話はとにかく分かりやすい! 相手が理解しやすい言語、理解しやすい順番で話すことができつつ、全体を動かしてビジネスを実現していける田山さんのような人は、ビジネスプロジェクトには必要不可欠。そして多くの人に慕われそうで、お客さまにも好かれているのだろうなと思います。

 

●石原さんの未来に向けてやっていること

石原さんは、未来に向けてやっていることを話すにあたり、サイバーエージェント時代に出会った言葉を教えてくれました。それは、「明日事業がなくなっても、ラーメン屋をやろうと言ったらみんなついてきてくれる」という言葉です。組織にいるメンバーが強烈にその組織を誇りに思っていて好きである、という組織文化が伝わってくると感じた石原さん。

石原さんはもともと、事業でゼロイチの価値をつくることに興味がありましたが、今はそれが変わってきていて、組織の中のカルチャーづくりに興味があり、今はそれを実践し、今後も深掘っていこうとしています。石原さんは日ごろから、「好きな人、なりたい人のそばにいるようにしている」そうで、こうした考え方も、組織の成長の原動力となるカルチャーづくりに活きている、そして、カルチャーづくりにやりがいを持っている源なのだろうと感じます。

 

起業している方々や起業経験者の間では当たり前なのかもしれませんが、3人がそれぞれ、自分の中に「未来のあるべき姿」を描いていて、それに向かって毎日一生懸命ビジネスに取り組んでいることがものすごく実感できました。これは学生にも伝わったと思います。

3 結局のところ、学生起業っていいのか?

3人の話はどれも、学生に向けたメッセージにあふれていたと思います。学生からの質問も、

  • 学生起業はしたほうがいいのか? 学生起業のメリットはどのようなものか?
  • 日ごろ、習慣化していることはどのようなことか?
  • お客さまからの要望をどのように引き出しているか?

などいろいろ。このほか、安田さんのSNS(https://x.com/sushi_koki)をフォローしている田山さんから安田さんに対して質問するという一幕もありました。

学生へのメッセージも含め、学生起業はしたほうがいいのか、そしてメリットは何かについて、3人からは次のような回答発言がありました。面白いです!

 

●安田さん

「学生起業は別にやらなくてもいい。デメリットも多い。メリットがあるとすると早く経験値を積めるということくらい。ほとんどの学生起業家は大企業出身の起業家に実績で抜かされる。」(のっけからのこの発言に、良い意味でざわつく会場)

「スポーツや芸術もすべての人ができるわけでないのと同じように、起業は適性もあるし、どちらかというと、『起業しよう』というより『起業しちゃった』という、やりたいことがあって動いちゃって(行動が先で)どうしようもない人がやるもの」

「大企業に就職するのもすばらしいと思う。そのへんの起業家では扱えない大きな仕事に携わることができるし、外貨を稼いでいるのもほぼ大企業。学生起業をしないで大企業に就職して、そこで培ったネットワークや仕事の進め方、調整の仕方などを携えてから起業するほうが、大きくインパクトを与える最短ルートだと思う」

「早いうちに海外に出る、海外と接点を持つのはいいと思う。どこに行っても20代のうちだとかわいがられる。大きな仕事をやりたい場合は特に語学を早くからやっておいたほうがレバレッジを効かせられる」

 

●田山さん

「学生だからとかに限らず、やりたいことがあれば起業するのはいいと思う。メリットとしては、起業すればそういう界隈の人、業界の人とかとの接点を持ちやすい。起業やスタートアップにかかわる言語で話すこともできるようになる。世界が変わる」

 

●石原さん

「学生の今だからこそ、起業にチャレンジできるチャンス。今後の長い人生の中で、おそらく、学生のときほど無謀に、リスクを考えずにチャレンジできるときは無いはず。これが学生起業の大きなメリット」

 

最後に、「今後、やること(事業など)は環境に応じて変えていくか? 変えていくとしたらどういうタイミングか?」という未来に向けた質問への回答が、これまた三者三様だったので、ご紹介してしめくくろうと思います。

安田さん「そのときそのときで、心が動くことをやろうかな、と」

田山さん「成功度合い、成長度合いを見て。自分が成長したと思ったら次のことをやる」

石原さん「世の中が変わっていく予兆をつかんで、それに応じて点をずらしていくイメージ」

3人とも、ビジネスもさることながら人としてもとても魅力的、かつ、大変なこと面倒なことも大いに経験しているのが伺えました。とにかく相手のこと、かかわる人のことを考え、大事にする。陳腐な言い方ですが、本当にすごい人というのは、人に優しいのだなと思います。

すべては自ら行動することで拓ける。今回、本当に、

「人生は、もっと自分で選択できる」

という力強いメッセージを感じました! そして、3人が

人とのつながり、出会いをとても大事にしている

という点も印象的でした。

すばらしい特別授業でした。学生の方々にも、大きな何かが伝わったと思います。有り難うございます!

以上(2024年9月作成)

提供
執筆:杉浦佳浩 (すぎうら・よしひろ) 代表世話人株式会社代表
三洋証券株式会社入社(昭和62年)。鹿児島支店にて勤務。地元中小企業、個人富裕層の開拓を実施。 日経平均最高値の2カ月前に退職。次に日本一給与が高いと噂の某電機メーカーに転職。埼玉県浦和(当時)にて、大手自動車メーカー、菓子メーカー、 部品メーカー等の主力工場を担当。 退職時は、職場全員から胴上げ。そして、某保険会社に二十数年勤務後、平成26年末に退社。在社中は、営業職、マネジメント職を経験して、リテール営業推進、若手人財育成を中心に担当していた。 社外の活動も活発に行っていた。平成27年1月1日、代表世話人株式会社を設立。
同社代表取締役に就任。世話人業をスタート。年間1000人以上の経営者と出会い、縁をつなげている。

関連するキーワード

PickUpコンテンツ